クロス打ち Ver0.01
なんか、「追い越し移動」で検索してくる人が多く、最近ゲーセンでお会いした方二人に同じ説明をしたので。
これまでサボっていたコラムをこれを機会に書いてみます。
ここに書いてあることは、ドラムマニアをやっている方は大丈夫だと思いますが、確認のつもりで。
とりあえず、Ver0.01ということで、挿絵や写真は割愛。
後日、挿絵を使って説明してみます。
序
ハイハット+スネアによるクロス打ち
ドラムマニアでよく見かけるいわゆる「クロス刻み」です。
平面的に見ると、(叩く人から見てハイハットは左、スネアは右にあるので、)ハイハットを左手、スネアを右手で叩くところを、その逆でハイハットを左手、スネアを右手で叩くやり方です。
このとき、平面的には腕(または、スティック)が交差しているので、クロス打ちと呼びます。
では、質問。このとき右手と左手のどちらのほうが上でしょう?
なんとなくクロス刻みを使っている人も、大体の人が「右手」と答えるでしょう。
では、なぜでしょう?
この質問に即座に答えられない場合は、危険です。
手筋が狭まったり、変な手筋を覚えてしまう可能性があります。
[初級者向け]基本は高いパッドを叩く手のほうが上
前節で、私はハイハット、スネアの位置関係は左、右にあると説明しました。
そして、それが「平面的に見ると」とも言いました。
では、立体的に見るとどうでしょう。どっちの手を上にすればいいかわかりますね。
そう、答えは極めてシンプルです。
ハイハットとスネアの「上下関係」で言うと、ハイハットのほうがスネアよりも高い場所に位置しているからです。
スネアを叩く左手は、ハイハットを叩く右手とスネアパッドの間にできる空間を使って叩きます。
譬えるならば、立体交差。
ハイハットを叩く右手は高架橋、そして、スネアはその橋の下を潜る道です。
無論、これは刻みだけでなく連打にも使えます。
表拍右でスネア連打をしているときに、表拍のハイハットが途中で入る場合は、右手はスネアを叩いている左手の上を通って、右手で打ちます。
逆に、表拍右でハイハット連打をしているときに、裏拍のハイハットが途中で入る場合は、ハイハットを叩いている右手とスネアパッドの間に左手を通してスネアを叩きます。
[初級者向け]クロス打ちはハイハット+スネアだけではない
勘違いしてはいけないのは、クロス打ちは「ハイハット+スネア」の組み合わせだけではないということです。
パッドの間に高低差がある場所ならどこでもできます。
そう。全てのパッドの中で一番高いシンバルは、どのパッドからでもクロスができます。
もちろん、このときシンバルを叩く左手は常に上です。
シンバルが左手で叩けるようになると、左譜面、裏拍シンバルなどで非常に重宝します。
また、スネア+ハイタムは、頻出。
中級者譜面でよく見かける、スネア→ハイタム→ロータムのフィルはクロス打ちを使って右手→左手→右手で捌くことができます。(ハイタムを叩く左手は、スネアを叩く右手の上を通る)
Rarry(Ext)や、Sweet Feline(Ext)はこればっかりです。
また、別パターンとして、LLRRS(S=スネア、L=ハイタム、R=ロータム)のフィルも、右始動で交互打ちができるようになります。
もちろん、RR(右手→左手)の後スネアを叩く右手は、(ロータムよりもスネアのほうが低い場所に位置するので、)ロータムを叩く左手とスネアパッドの間にできる空間に挿し込んで叩いてください。
間違えても、近道をしようとして高架橋から飛び降りたりしないでくださいね。
ちなみに、ハイハットとスネアの高低差はドラムマニア筐体では噂どおり、確かに小さめです。
また、「ハイハットが低すぎる」という噂も聞きます。
しかし、現実は違います。
スネアのほうが高すぎるのです。
ドラムマニア筐体では、胸の辺りにありますが、本物は膝〜臍の高さくらいの位置にあります。
[初級者向け]クロス打ちの意義
ドラムマニアでよく見かけるクロス打ち。
ところが、よく見ると意味のないクロスを使っている方をよく見かけます。
では、「意味のあるクロス」とは何か?
その前に、まずハイハット+スネアによるクロス刻みを考えて見ましょう。
ではまず、そもそもなぜハイハット+スネアによるクロス刻みが生まれたのでしょう。
それを考えるためには、クロス刻みをするとどうなるのかを考える必要があります。
すると、ハイハットを刻んでいる右手は常に8分のリズムを刻んでいることになります。
では、そのままRIGHT ON TIME(EXT)のリズム(16分でHHHH|SHHH|HHHH|SHHH|…(H=ハイハット) )を刻んでみましょう。連打の基礎は押さえていますか?
するとどうでしょう?
表拍はそのまま右手で刻んでいますね。
しかも、スネアはうまい具合に表拍に入っているので、(クロスすら使わずに)右手でそのまま叩けますね。
そう、クロスの目的は、「16分の表拍(8分)を決まった手で叩くためのもの」です。
だから当然、右手で8分を刻んでいる場合、裏拍にハイハットが来る場合は左手でハイハットを叩くことになるわけです。
- ハイハットを左手で捌けなくなった
- (ひどいときになると)左手がスネアから動かず、ついタムの連打まで片手でやってしまった
という症状が現れたらご用心。
右手で「ハイハットを叩く」のではなく、「表拍を叩く」ことを意識するようにしましょう。
[上級者向け]クロス打ちと追い越し移動は全くの別物
「追い越し」だけで検索なさっている方はこの違いは大丈夫でしょうか?
念のために「追い越し移動」の概念を確認しておきましょう。
ここまでで挙げたクロス連打だけではどうしても手詰まりになるものが存在します。
なぜなら、全てのパッド同士に高低差があるとは限らないからです。
(この場合、左譜面とも右譜面ともつかない)
それを解決する方法が2つ。
- ダブルストローク
- 追い越し移動
今回解説するのは後者。
では、「追い越し移動」とはなにか?
簡潔に説明すると、
高低差のないパッド同士を叩くとき、片方の手が無理やり空間を作って叩いて、もう一つの手が叩けるスペースを作り出す技術です。
これを行うためには、スペースを作り出すほうの手の叩き方(スティックの軌道)を変える必要があります。
それに対し、クロス打ちの場合は、パッドの高低差によって既に空間ができているので、特にスティックの軌道を意識する必要はありませんでした。
まとめるとこういうこと。
- クロス打ちはパッドの高低差を利用して叩く技術。追い越し移動は、もう片方の手のための空間を作り出す技術。
- 端的に、クロス打ちは初級水準の技術(できなきゃ問題)。追い越し移動は上級水準の技術(基礎ができてはじめてやるもの)。
追い越し移動の利点は、左手順を右手順に無理やり変えることができ、1曲の間でリズムが崩れることがないということです。(資料集のMr.Moon(Ext)参照。この譜面の場合、そこまでむずかしくないですが)